韓国が始めた慰安婦像の設置という反日運動がドイツの首都ベルリンに飛び火し、日独の友好にひびが入りかねない事態になっている。
日独両政府は、歴史を捏造(ねつぞう)して日本を貶(おとし)める慰安婦像を撤去させるべく行動してもらいたい。
ベルリン市ミッテ区の公有地に、韓国系市民団体「コリア協議会」が設置した慰安婦像について、同区議会が永続的な設置を促す決議を採択した。区による1年間限定の許可が永続化される恐れがある。
像の台座には「第二次大戦中、日本軍はアジア太平洋地域の無数の少女や女性を強制連行し、性奴隷にした」と記されている。決議は、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話を引用している。
このまま放置すれば、慰安婦とは強制連行された「性奴隷」であるという歴史の捏造が欧州の主要国ドイツで広まってしまう。到底看過できない。
河野談話を作成した際の日本政府の調査で強制連行を裏付ける資料は一切なかったことが明らかになっている。平成26年には朝日新聞が強制連行説の根拠となった「吉田証言」が虚偽だったと認め関連記事を取り消し謝罪した。
日本政府はこれらの経緯を広く発信し、像の撤去を実現させなければならない。虚偽が含まれ、日本を傷つけるだけの河野談話は白紙撤回すべきである。
自民党の佐藤正久外交部会長が11月、区長や区議会議長、ベルリン市長に書簡を送り、撤去を求めたのは妥当だ。書簡は、日本が慰安婦問題に真摯(しんし)に取り組んできた経緯を紹介し、像の設置が「日韓の政治問題をドイツに持ち込むことにより日独関係を損なう」との懸念も伝えた。ドイツ側は真剣に受け止めてもらいたい。
平成27年の日韓合意は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。「国連など国際社会」において互いに非難、批判することは控えると約束した。
だが、日本政府がベルリンの像撤去を求めたことに韓国政府は「元慰安婦への謝罪の精神に逆行する」と反発した。
日本は不当な反日宣伝から身を守ろうとしているだけだ。史実に基づかない反日の像設置を勢いづかせるような韓国政府のほうが国と国との約束を反故(ほご)にしている。恥を知らなくてはならない。
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2020年12月5日付産経新聞【主張】を転載しています